人を動かすファシリテーション〜メンバーの提案内容がイマイチだったとき〜

会社で、働き方改革の実現を任命されている里中さん。電子ファイルの名称に統一ルールがなく、バラバラな名前で保存されていることが、検索性を下げていると感じていました。

 

そこで、名称の統一ルールを作り、今後はそれに従って名前をつけること。また、既に保存されている電子ファイルについては、作成した本人がルールに従って名前を変更するように周知しました。全てを変更すると数が多いため、過去3年に作成された電子ファイルだけを変更するとことと決めました。

 

このとき、里中さんは、名称変更すべき電子ファイルと、作成者をリストにし、それをメンバー全員に一斉配信したのです。誰がどのファイルを変更するのかがわかれば便利だろうという親切心からでした。

しかし、その一覧の中に、山田部長が知られたくないファイルがありました。それは、山田部長がある部下を引き抜くために面談した際の記録でした。

リストにその電子ファイルが掲載されているのを見つけた山田部長は激怒して里中さんを怒鳴りつけました。

「里中っ! 何をしてくれたんだ! 人に知られたくない資料があるだろっ! 何でもかんでも公表すれば良いってものではないことくらい、わかるだろうがっ!雑な仕事をするんじゃねーよ!」

 

里中さんは、申し訳ないという気持ちになりましたが、それよりも、めちゃくちゃに怒られたことが腹立たしく、働き方改革に対する意欲が薄れてしまいました…

 

 

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山田部長はどうしたかったのでしょうか?

ただ、自らの怒りをぶつけたかったのでしょうか?里中さんを怒ったところで、覆水は盆に帰りません。それよりも、里中さんにはイキイキと働き方改革に邁進して欲しいのではないでしょうか。

今後同じようなことを繰り返して欲しくないと願うなら、言い方を変えた方が良いでしょう。まず、相手が何故そんな言動を取ったのかを考えてみてはいかがでしょうか。

 

 

里中さんは、こう考えていました。

•名称を変更する対象のファイルや、担当者がわかった方が便利である。

•管理職の作成したファイルには、他の人がアクセスできない設定がされているので、オープンにしても問題ない。

•メンバー一人ずつに、個別の変更リストを作って知らせるのは手間がかかる。全員に一度に送る方が時間短縮になって良い。

 

里中さんは決して山田部長に嫌がらせをしたかった訳ではなく、むしろ良かれと思ってリストを公開したのです。

ただ、知られたくないファイルがあるということに考えが及ばなかったのです。また、リストの数が多いので、どんなファイルがあるのかを全てチェックしていなかったのです。

 

☆mimuraの提案☆

 

山田部長「里中さん、ファイルの名称を統一するというメールを確認しました。名称の変更は大変だけど、完了したら生産性向上につながりそうだね」

 

里中さん「はい、お手数ですが宜しくお願いします」

 

山田部長「ところで、あのリストには対象のファイルが全て記載されていたのですか?」

 

里中さん「はい。そうですが、何か問題がありましたか?」

 

山田部長「いや、実は極秘の面談記録まで公開されていてね、あの資料は他のメンバーに知られたく無かったなぁ…」

 

里中さん「あ、そうだったのですか。それは大変申し訳ありませんでした。そのような資料があるとまで考えが及びませんでした…」

 

山田部長「まぁ、起きてしまったことは仕方ない。今後、同じことが起こるのを防ぐためには、どんな方法が取れるだろうか?」

 

里中さん「全てのファイル名をチェックするのは時間がかかりますし…。そうですね、一人ずつメール配信するのはどうでしょうか?

一度にメールするより手間はかかりますが、極秘データが他のメンバーに知られる可能性は無くせます」

 

山田部長「なるほど。それなら大丈夫だね。今回の分は仕方ないが、次回からは頼むよ」

 

里中さん「はい、わかりました!」

 

 

〜使用した原則〜

批判、非難もしない。不平も言わない。

誠実に相手の視点からものを見る。