人を動かすファシリテーション〜対立する参加者〜

 

業績低迷中のSakata計器社では、営業担当者のヒアリング力不足が問題だと考えられていました。それを解決する施策を考えるために、会議が開かれました。

最初に解決策を提案したのは、教育部門の山本部長。ヒアリング力向上研修に、営業担当者を参加させるべきだと主張しました。

一方、営業部門の中川部長は、研修に参加するだけの時間を確保できないと反論。それよりも、現場でメンバー同士がフィードバックし合う仕組みを作る方が効果的だと主張しました。

お互い、相手の案を悪く言うばかりで会議は進みませんでした。後日、仕切り直しの会議が開かれることになり、人事部門の三田さんが、会議のファシリテーターとして参加することになりました。

 

対立する参加者に有意義なディスカッションをしてもらうため、三田さんは次のような言葉をかけました。

 

「山本部長、中川部長、お疲れ様です。今日は私をファシリテーターにお招きいただき、ありがとうございます。

事前にお二方の提案内容を拝見しましたが、どちらも営業担当者のヒアリング力不足を解決するために真剣に考えられたものだと感じられました。

いま、営業現場では、ヒアリング力が不足していることによる問題が出ているとお考えでしょうか?」

 

2人の部長は「はい」と答え、お互いが感じている問題点を話し始めました。今回は、お互いを悪くいうことはなく、建設的な意見交換がなされました。

 

使用した原則は、"まず「イエス」と回答する質問をする"です。

お互い感じている問題点は同じで、どちらも営業担当者のヒアリング力を向上させたい。ただその手段が異なっているだけだということを認識させたのです。

お互いに敵ではなく、同じ問題解決をしようとしている仲間という一体感を生み出すために、まず参加者皆んなが「はい」と答えられる質問をしましょう。